
クッキーバナーのダークパターンとは?具体例や企業のリスク対策を解説
「クッキーバナーのダークパターンとは?」、「ダークパターンに当てはまる実装をした場合のリスクは?」、「企業はどのように対応すればよいのか」と、お悩みの方もいるのではないでしょうか。
企業がUX・UIに優れたWebサイトを運営するためには、クッキーバナーがダークパターンにならないように考慮する必要があります。
本記事では、クッキーバナーにおけるダークパターンの具体例や日本を含む各国の法規制事情、対策を怠った企業が負うリスク、必要とされる対策など、企業が押さえておくべきポイントを詳しく解説します。
クッキーバナーのダークパターンとは
クッキーバナーのダークパターンとは、WebサイトにおいてユーザーからCookie(クッキー)の取得・利用に関する同意を得る際、ユーザーが意図しない不利な選択をするように巧妙に誘導するデザイン手法のことです。
一般的に、ダークパターンはクッキーバナーに限らず「消費者が気付かない間に不利な判断・意思決定をしてしまうよう誘導する仕組みのWebデザインなど」を指す用語として位置づけられています。
OECDの報告書「Dark commercial patterns」では、ダークパターンを以下のように定義しています。
「ダーク・パターンとは、消費者の自主性、意思決定又は選択を覆す又は損なうデジタル選択アーキテクチャの要素を、特にオンライン・ユーザー・インターフェースにおいて、利用するビジネス・プラクティスのことである。これらは、しばしば消費者を欺き、強制し、又は操作し、様々な方法で直接的又は間接的に消費者被害を引き起こす可能性があるが、多くの場合、そうした被害を計測することは困難又は不可能であろう。」
クッキーバナー以外のダークパターンの具体例は、以下のとおりです。
- 実際には十分な在庫があるにも関わらず、「売り切れ間近」と表示してユーザーの購入を促す
- 「1回限りのお得なキャンペーン」を前面に出して購入に誘導し、ユーザーに気がつきにくい形で定期購入になるような取引条件を規約内にわかりにくく記載したり、ネットで契約してもコールセンターでしか解約できず、電話もつながりにくいなど解約しにくくしたりする
一般社団法人 ダークパターン対策協会の前身の「Webの同意を考えようプロジェクト」による調査では、ダークパターンによる被害額は国内だけで年間1兆円を超えると推定しています。
そもそもクッキー・クッキーバナーとは
Cookie(クッキー)とは、ユーザーがWebサイトを訪問した際に、そのWebサイトからユーザーのブラウザに送信される小さなデータファイルのことです。これらのデータファイルは、訪問履歴や設定情報を記録し、次回訪問時にその情報を元に、最適化されたコンテンツや機能を提供するために使用されます。
またクッキーバナーとは、訪問者にWebサイトにおけるクッキーの使用状況について知らせ、同意を求めるためのメッセージやポップアップを指します。
クッキーの活用メリットは、以下のとおりです。
ユーザー/企業 | 主なメリット | 詳細 |
---|---|---|
ユーザー側のメリット | 情報入力を簡略化できる | 一度入力した内容が保存されるため、ログインや住所・連絡先などの情報入力が簡略化される |
ECサイトのカート内容を保存できる | 商品をカートに入れた状態でWebサイトを離れても、カートの中身が保存される | |
企業側の メリット |
アクセス解析できる | Webサイトへの訪問者の行動を詳細に追跡・解析できる |
Webマーケティング施策の最適化を図れる | 「ユーザーの興味や関心に基づいたパーソナライズド広告を配信する」といったマーケティング施策の検討に役立つ |
企業としてはクッキーバナーを導入することで、ユーザーに対してプライバシー保護の姿勢をアピールできることから、近年多くの企業が採用しています。
関連ページ:Cookie(クッキー)とは?仕組みや種類、設定・管理方法などを分かりやすく解説 | STRIGHT
同意の形骸化によるダークパターン横行への懸念
クッキーバナーを導入することで、Webサイトを訪れたユーザーに「運営企業は消費者のプライバシー保護に配慮していて安心できる」と印象づけられます。ユーザーの信頼を得て、安心してサービスを利用できる環境を整えれば、企業ブランディングや売上向上などにも期待できます。
一方、クッキーバナーが繰り返し表示され、Webサイトを訪れる度にクッキー使用に関する同意を求められるようでは、ユーザーはうんざりしてしまうでしょう。いわゆる「同意疲れ」に陥ることで、クッキーバナーや個人情報の取り扱いに関する規約などをしっかり読まずに同意してしまう「形骸化した同意」や「とりあえず同意」につながりかねません。
このような背景から、悪意のある事業者が「同意疲れ」状態の消費者につけ込み、ダークパターンが横行することへの懸念が高まっています。
関連ページ:クッキーバナーの同意は必要?実装をする意味やツールの選び方を解説 | STRIGHT
企業が避けるべきクッキーバナーにおけるダークパターンの具体例4つ
「ダークパターンがよくないことは分かったけれど、自社のWebサイトのクッキーバナーに問題はないだろうか」、「具体的に、どのようなクッキーバナーがダークパターンに当てはまるのか」と疑問を抱く企業担当者は多いでしょう。
企業が避けるべきクッキーバナーにおけるダークパターンの具体例は、主に以下の4つです。
- 1. 有害な誘導・足止め
- 2. 同意の強制
- 3. 一括同意
- 4. 同意を得ない情報取集
それぞれ詳しく見ていきましょう。
有害な誘導・足止め
クッキーバナーにおけるダークパターン例の1つめは、ユーザーが望まない選択をするように意図的に誘導し、本来の選択を足止めする「有害な誘導・足止め」です。
具体的には、「同意」ボタンはワンクリックで押下できるにも関わらず、クッキーを拒否するためにはプライバシー設定ページに遷移し、個別に設定を行わなければならない仕様などが該当します。クッキー取得の同意に比べて拒否する手間のほうが大きいため、本来であれば拒否を選択したいユーザーも「同意」の選択に流れやすくなります。
同意の強制
クッキーバナーにおけるダークパターン例の2つめは、Webサイト運営側からの一方的な「同意の強制(クッキーウォール)」です。
例えば、以下のような例はダークパターンに該当します。
- ユーザーが同意ボタンを押さなければコンテンツを閲覧できない
- 「同意ボタンしか押下できない」など、クッキーを拒否する選択ができず、同意せざるを得ない仕様になっている
クッキーウォールを回避するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- クッキーの同意有無に関係なく、主要なコンテンツやサービスにアクセスできること
- クッキー同意に関する本人関与機会をユーザーに提供している
一括同意
クッキーバナーにおけるダークパターン例の3つめは、クッキーの使用可否を個別に選択できない仕様で、取得データを複数の目的に利用することなどをユーザーにまとめて同意させる「一括同意」のみしかない場合です。
例えば、サービス提供の条件として、アカウント登録画面でクッキー使用に関する一括同意を促すボタンがあるのにも関わらず、一括で拒否をするボタンが無いデザインなどは、ダークパターンに該当します。
同意を拒否しているのにも関わらず行われる情報取集
クッキーバナーにおけるダークパターン例の4つめは、ユーザーの意向を無視して情報を収集するケースです。設定画面などからユーザーが同意を撤回したにも関わらず、クッキーのデータ取得を続ける悪質なケースが該当します。
クッキーバナー実装時の不備、または、そもそも適切な機能が実装されていないクッキーバナーを利用していると起こり得ます。基本的に商用のクッキーバナーであればこのようなことは起こりませんが、無料のクッキーバナーでは「同意」、「拒否」のボタンがあるものの、ユーザーの選択がデータ取得の挙動に影響せず、見かけだけで意味をなしていないことがあるため注意が必要です。
国内外におけるクッキーバナーのダークパターンの規制事情
クッキーバナーのダークパターンは、各国のプライバシー保護規制によっては違法とみなされる可能性があります。企業側は、国内はもちろん、海外の動向についても把握しておくことが大切です。
ここでは、海外・国内におけるクッキーバナーのダークパターンの取締り状況を紹介します。
海外の取締り状況
海外では、欧米を中心にダークパターンが規制されています。
欧州連合(EU)
欧州連合(EU)では、オンライン上の違法コンテンツ対策や消費者保護を目的とした法律「デジタルサービス法(DSA:Digital Services Act)」によって、ダークパターンの使用を禁止しています。
個人データの保護とプライバシーの強化を目的とした「EU一般データ保護規則(GDPR:General Data Protection Regulation)」においても、「透明性・公正性の原則」などに対する規制対象となる可能性があります。
GDPRはEU域外の事業者にも適用されるため、日本企業も注意が必要です。
参考:EU(外国制度) GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)
米国
米国では、「連邦取引委員会法(FTC:Federal Trade Commission Act)」においてダークパターンを取締まっています。
また、カリフォルニア・テキサス・コネチカット・コロラド・モンタナ州などでは、州独自の法律で「ダークパターンを用いて取得した同意を無効とする」ことを定めています。
なかでも「カリフォルニア州消費者プライシー法(CCPA:California Consumer Privacy Act)」では、日本でいうところの利用規約(Terms of Use)で個人情報の第三者提供に関する同意を得ることも規制対象となっています。
日本国内の取締り状況
2025年3月現在、日本国内において、クッキーバナーやダークパターンに対する直接の法規制は存在しません。
ただし、個人情報保護法や改正電気通信事業法により間接的に規制されており、特定の分野やケースでは法令違反となる可能性があります。
個人情報保護法 | クッキー単体は個人情報ではないとしているものの、他の情報と照合して特定の個人を識別できる場合は個人情報として扱われる |
---|---|
改正電気通信 事業法 |
外部送信規律の規制の対象事業者に該当し、Google Analyticsなどのアクセス解析やターゲット広告の配信など規制対象に該当する行為を行う場合、以下のいずれかの対応が必要 ・通知・公表 ・事前同意取得 ・オプトアウト機会提供 |
また、民間主導によるダークパターン対策の取り組みも進んでいます。例えば2024年9月には、一般社団法人 ダークパターン対策協会が発足しました。
同協会では消費者が安心して利用できる誠実なWebサイトを認定する「NDD(Non-Deceptive Design)認定制度」を開始する予定です。認定されたWebサイトには認定ロゴが付与され、事業者は消費者に対して誠実なWebサイトであることを一目でアピールできます。
クッキーバナーのダークパターン対策を怠った企業のリスク
企業が抱えがちな以下のような事情から、意図せずクッキーバナーがダークパターン化している恐れがあります。
- クッキー取得の同意率を上げて、マーケティングに役立つ情報をできる限り多く収集したい
- クッキーバナーの設置によって、Webサイトのデザインを損ないたくない
しかし、クッキーバナーのダークパターンは国内外の取締り状況によっては違法とみなされるリスクがあるため、注意が必要です。「日本には厳格な法規制がないので、対策しなくても特に問題ないだろう」という考えは避けるべきでしょう。
例えばEU域外の事業者にも適用されるGDPRに違反した事業者には、「最大2,000万ユーロ、または全世界年間売上高の4%以下のいずれか高い方」という多額の罰金が科される可能性があります。
また、クッキーバナーのダークパターンによってユーザーの困惑を招くWebサイト運営は、消費者からの信頼を失う原因になりかねません。短期的には利益が増えるかもしれませんが、中長期的な目線で見るとレピュテーションリスクが顕在化し、結果的に損失の方が多くなる可能性もあります。
Webサイトを運営する企業は、後述する対策ポイントも参考に、クッキーバナーに関する適切な対応を実施しましょう。
企業に求められるクッキーバナーのダークパターン対策
クッキーバナーのダークパターン化を回避するために、企業はどのような対策を講じればよいのでしょうか。
ここでは、企業が実施すべきクッキーバナーのダークパターン対策について解説します。
実装前にガイドラインを確認する
Webサイトにクッキーバナーを実装する前に、注意ポイントを確認しておきましょう。
クッキーバナーのダークパターンを避けるためには、ユーザーが自らの意思でアクションを選択できるデザインを心がける必要があります。
適切なクッキーバナーの設置方法に悩む場合、一般社団法人 ダークパターン対策協会が公表している「ダークパターン対策ガイドライン」を参考にするとよいでしょう。
将来を見据えた対応を検討する
将来を見据えた対応を検討することも大切です。
現在の日本は欧米に比べてダークパターンに対する厳格な法規制がない状況ではあるものの、今後は企業の対応強化が求められるでしょう。
例えば2025年7月から開始予定のNDD認定(消費者が安心して利用できる誠実なWebサイトを認定する制度)では、認定ロゴを取得するためにダークパターン回避が必須となります。運営サイトにおける海外ユーザーが増えれば、GDPRなどへの適切な対応も求められます。
ユーザーからの信頼を獲得し、円滑なビジネスを展開するためにも、早い段階からNDD認定や国内外のプライバシー保護規制を見据えた対応を検討しておくべきでしょう。
社内で対策意識を共有する
クッキーバナーのダークパターン対策を実施することが、結果的に「企業ブランドの価値を高める」という認識を、社内で共有することが大切です。
現時点の日本では、クッキーバナーやダークパターンに関する知識が法務担当者やプライバシー保護の意識が高い広報・マーケティング担当者以外に浸透しているとは言い難い実情があります。まずは法務・広報・Web・マーケティングなどの担当者が理解を深め、社内周知を徹底する必要があるでしょう。クッキーバナーやダークパターンに関する正しい知識を得るために、無料で参加できる説明会を活用することもおすすめです。
また、クッキーバナーを設置するとWebサイトのデザイン性が損なわれやすいという課題もあります。クッキーバナーのダークパターン対策による質の高いユーザー体験(UX)と、ブランドイメージを両立させるための方法を検討する必要があるでしょう。
しかし、IIJが開発したプライバシーツール「STRIGHT(ストライト)」を活用すれば、Webサイトのデザイン性を維持しながら、クッキーバナーのダークパターン対策を講じることが可能です。クッキーバナーのダークパターン対策にお悩みの場合、ぜひ導入をご検討ください。
STRIGHT(ストライト)でクッキーバナーのダークパターン対策を
STRIGHTは、日本のインターネットのパイオニアである株式会社インターネットイニシアティブが提供する日本製のプライバシーツールです。クッキーバナーを表示させない「出さないクッキーバナー」で、ユーザーのプライバシー保護に配慮できます。
STRIGHTを導入することで、さまざまな国の法対応をはじめ、NDD認定制度のガイドラインもクリアしたダークパターンにならないクッキーバナーの設置が可能です。
世界各国のプライバシー保護規制に対応したテンプレートを提供
世界各国のプライバシー保護規制に抵触することのないクッキーバナーを自社で確認し対応することは、容易ではありません。法規制が更新される度に、プライバシーポリシーや表示方法の調整が必要になるケースもあります。
STRIGHTは、日本の改正電気通信事業法への対応はもちろん、海外の法規制にも対応したテンプレートを提供しています。法規制の更新があった際はSTRIGHTのテンプレートも合わせて更新されるため、管理・運営の手間を軽減できることが特長です。
関連ページ:機能紹介 | STRIGHT ストライト
サイトデザイン・UIを損なわずにダークパターン対策が可能
クッキーバナー表示による「サイトデザインが損なわれ、ブランドイメージに影響が及ぶことを避けたい」、「離脱率が上がってしまわないか心配」といった悩みを抱える企業は少なくないでしょう。
ブランドサイトに適したプライバシーツールのSTRIGHTであれば、「出さないバナー」を活用できるため、ページ上にクッキーバナーが大きく表示されてサイトデザインを邪魔することはありません。
ユーザーは、Webサイトのフッターやハンバーガーメニューの「プライバシー設定」から、クッキーに関する詳細説明の確認や同意・同意取り消し対応などを簡単に行うことが可能です。サイト訪問時に目立つクッキーバナーが表示されないため、快適にWebブラウジングを楽しめます。
また企業はユーザーに対し、プライバシー保護重視の企業姿勢を示しながら、マーケティングに役立つ情報を収集できます。
なお、GDPRなどオプトイン同意が必要な法域への対応や、希望に応じてクッキーバナーを表示させることも可能です。
導入及び利用が簡単
STRIGHTはお申込みから導入後のサポートまで完全自動化しているため、スムーズに導入することが可能です。また日本語完全対応のサポートやマニュアルが完備されているため、安心してご利用いただけます。
無料の導入マニュアルや解説動画を活用して自社で完結して実装できるほか、ご希望に応じたさまざまな手厚い有料サポートサービスを提供しています。例えば、世界各国のプライバシー保護規制が求める端末装置への情報の読み書きに関する法規制(いわゆるクッキー等規制)に関して、当該法規制が求める要件を満たしているかどうかのコンプライアンスチェックも可能です。
細かくカスタマイズできる機能が備わっているため、導入後もWebサイトの運用状況や自社の希望にあわせて柔軟にメンテナンスしやすい点も魅力です。
関連ページ:CMPツール(同意管理プラットフォーム)とは?国内外で対応可能なツールの選び方 | STRIGHT
関連ページ:STRIGHTのサポートに関する情報
クッキーバナーのダークパターン化を回避しよう
クッキーバナーのダークパターンとは、Webサイトにおいてユーザーからクッキーの取得・利用に関する同意を得る際、ユーザーが意図しない不利な選択をするように巧妙に誘導するデザイン手法です。
近年では、ユーザーの「同意疲れ」などを悪用したダークパターンの横行が問題視されています。既に海外では欧米を中心にダークパターンが規制されており、日本でも「NDD(Non-Deceptive Design)認定制度」がスタートします。
ユーザーからの信頼を維持し続けるためにも、企業はクッキーバナーを適切に運用することが大切です。
STRIGHTを活用することで、Webサイトのデザイン性はそのままに、クッキーバナーのダークパターン対策を実施できます。
クッキーバナーの導入を検討しているWeb担当者様やマーケティング担当者様、コンプライアンスの一環としてダークパターンに該当しないクッキーバナーを導入したい法務担当者様は、ぜひ導入をご検討ください。
これらのポイントを満たすのはIIJのSTRIGHT(ストライト)
- クッキーバナーを実装したいけどデザインを壊したくない
- 国内外の法規制に対応したクッキーバナーを導入したい
- ダークパターンにならないクッキーバナーを実装したい
STRIGHTならすべて解決!
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